※ 個人の感想です

首都圏に数年間居住していた頃、蕎麦店へよく出かけた。どのお店の味も出汁や調味の個性があり、蕎麦そのものの細さ強さも違う楽しみがありますます蕎麦が好きになった。

関西に住んでいる今は都内に住むアミゾウ(子)の家に居候する時に必ず一度は美味しい蕎麦をいただきに歩く。日経新聞の著名人に食の記憶についてインタビューしている記事の隅に小さく「私食店」とあり、彼らが気に入ってよく訪れる飲食店を紹介している。

昨年、その中で広尾にある蕎麦店を勧めていた。場所もわかるだろうと思い、アミゾウ宅にお邪魔した折一人で行ってみた。広尾の駅から少し歩く。江戸は坂と谷の街だなと実感する地形の坂をヨロヨロと登りきり表にも建物の自体にも店名やメニューボードのないひっそりと上品な店構え。人気店だろうと予測していたのでランチタイムだから尚更ご繁盛されている。少し待ってから案内された。店内はワンフロアだと思える。お馴染みのご常連が通される別室があるのかはわからない。

地域柄だろう、ディファレントカントリーとお見受けする多分大使館関係者の男女がするすると箸を優雅に使い蕎麦を楽しまれているのが私の普段には経験しない光景で少し驚いた。厨房もフロア担当の方も忙しくされているが、優しい対応だし、つくづく上品なお店だと感心する。

蕎麦は夏場のすだち蕎麦を楽しむ時以外は真冬でもざる蕎麦が好き。ここでも[ざる]と少なめの天ぷらをオーダー。ソロ食事にはおしゃべりしながらワイワイ食べる楽しみはないけれど、内装やにおい、音にじっくり気を配ることができて面白さがある。このお店はテーブル席が多く間隔も広くとってはいないのでお隣さんとの距離も近かった。これは気をつけねばいけない環境。建物好きなもので、天井や壁、調度品や活けられていれば花、つまり360度キョロキョロしてしまいたくなる。しかし、すでに召し上がっている他人様の様子までキョロキョロ、ジロジロ見てしまわぬよう細心のマナーを心がける。

サーブまでは時間があったようで、ソロ〜っと見渡して自席まで視線を戻す前に右隣の男女の女性客の横顔をまともに見た。なんと俳優の黒木 メイサ氏であります。江戸の民はその絶対数が多いのだからよ〜〜く似ていらっしゃる方もそりゃ何人もいるでしょう。と見間違いだと前を向いた。そこへ隣席男女の会話が聞こえてくる。50センチほどしか離れていないから聞こえますよ。美貌のその女性の声は何度も映像のと共に聴いた彼女の声。

心からのファンである方々とは違って私はいかに美しくても彼女の容貌も声も好きではなく嫌いな俳優さんのうちの一人だった。

向かい合って座るお連れの男性が空腹らしく彼の後方にある厨房を何度も振り返っている。と、メイサ氏、艶やかな低音ボイスで、

「何度もそんなに見ないで・・・。お店の人が何かしら?って気になさるでしょ」

と発言。

はい、私一気に黒木 メイサ氏のファンになりました。続けて運ばれてきた蕎麦や一品を召し上がっている姿も素敵。箸使いも姿勢ももちろんモグモグの仕方も上品。

蕎麦は細くてキリリ、美味しくいただいたし、素敵な男女をあれほどの近距離で拝見できるなんて江戸は怖いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました