ナミゾウカンパニー 書籍部1課

みなさま本日のご機嫌はいかがでしょうか。

映画「紙の月」が公開されていた時期に予告映像や、映画案内記事で概要を知り、主演が「宮沢 りえ」さんということもわかってはいましたが公開時期に見逃していました。

後年レンタルビデオで作品を鑑賞しました。主演の「宮沢りえ」さんはいうまでもなく、好きな俳優さんの「池松壮亮」さんがキーパーソンとして気になる人物像をみごとに演じられていました。とてもいい作品だと感心したので、そこでやっと原作の「角田光代」さんを知り著作をいくつか読みました。

長編も読みましたが、一番好きになったのが短編が連作となって着地する作品、

「くまちゃん」

です。男女ともに登場して視点が女性だけではなく、「紙の月」のような重いテーマが底に流れることもありません。人の脳が持つ普遍のざわめき、悔しさ、情けなさそれらがミックスジュースのように混ざり、いい味になっていくその面白さを読めます。恋愛の苦しさや高揚感、人の持つ毒とそれを解毒する薬としての時の効用を流れるように文章化されています。「うまい。上手だ。」とプロフェッショナル作家さんに向け、思ったことでした。

主軸を成すのは「好きになった」「振った」「振られた」の人間関係です。この3点のうち、筆頭の「好きになった」は何度も経験しましたが、後者2点にはまったく縁のない人生でした。友人のそれらを聞き、いいなぁとうらやみながらやがてこの世界を去っていくんだなと思うと一度くらいは恋愛で過ごす時間があったらよかったなぁとぼんやり思います。無風状態だったことの良さを挙げるならば、この作品内での登場人物が振り回されてべつのところで迷惑を被る、こともまた無風だったことだけです。

先日同級生の集まりがあり、中学時代に誰と誰が実は付き合っていたんだぜ、と公開されるエピソードがいくつかあり、それを聞いていて、そうかそういう思い出もわたしにはないんだなとちょっぴり切なくなりました。

恋愛において勝者が少ないということも知り合いは言っていましたし、年若い同僚は、

「ナミゾウさん、いいですか、何人付き合ったって関係を持ったって一人だけっていう人と変わんないんですよ」

と至言を残しました。彼女は日本人には珍しいカーヴィボディでくっきり目鼻立ちで態度も堂々としていました。語ることの端々にお父様への嫌悪感があったようで、それが恋愛事情に影響することもあったのかなと後年思いました。数十億のヒトそれぞれが全員違う恋愛をするんだなと想像すると面白いです。

角田光代さんの次作もたのしみです。

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