ナミゾウカンパニー 家庭調査部

みなさま本日のご機嫌はいかがでしょうか。

ポッドキャストでいくつかの番組を聴いています。生活情報を知り、笑い話に身をよじりと飽きずに楽しんでいます。以前から新聞や雑誌その他出版物上での身の上相談、お悩み解決の記事にも関心はありました。ポッドキャストの中でも相談コーナーがありますし、リスナーさん達から寄せられるメール紹介を聴いていて、家族が長く親密でいる家庭の方が実は少ないのではないかとさえ感じるようになりました。

そういうわたし自身、ふた親が在命中に仲良くできていたかと問われればそうではありません。両親から叱られなかった日を数える方が早いくらい、パッとしない子でありました。

注意され、怒らせる内容はたいてい同じことで、つまりは何度も言われても改善しようとしていなかった。ガッツがあれば、家を出て自活する方法だってあるのにその行動さえ起こさず、ただただ「なんだか、毎日嫌だなぁ」と思っていただけです。

ふた親は共働き、しかも母は自営業をしており、休日は週に一回。お客様都合で、閉店時間をかなり過ぎてからやっとシャッターをガラガラという日もザラにありました。

家庭調査部、のタイトルからは逸れますが、今言ったお客様都合というものに当時いつもむっとしていました。決まって閉店時間ピッタリに来られる、あるいはその時間に店の前に来て他のお客様が中にいることを確かめて堂々と「はい、お願い〜。」と来られる。

「あ〜空いててよかったぁ。」とおっしゃる。そりゃそうでしょうよ。床を掃除しているのが見えませんか。閉店作業中なんですけど。と、こころで毒付いていました。お客様は神様ですと言われますが、現代にそのようなことをされるなら、「カスタマーハラスメント」と言わせていただきたい。

以上のように長時間の立ち仕事をしてやっと帰宅する母はきっと疲れ切っていたのでしょう。おしゃべりに付き合ってくれることもなく、口を開いたかと思えばわたしへの苦情と小言でした。ふた親が働いてそれでかつかつの暮らしだったのですから、母としては娘がしっかりしてくれれば、体が楽なのになぁと期待をしても、かなわないのでイライラしていたのだと思います。

遅めの夕食が終わり、洗い物を私がしている間、母はよく「2サス」つまり約2時間のドラマを観ていました。連続ドラマはその時間にいつも観られるわけではないし、当時は録画をするなんて考えてもいなかったのでしょう。一台きりのそのテレビ画面でわたしも同じドラマを9時から見始め、結末が気になるし、入浴もしたいしで、たいていわたしが、

「じゃー、お風呂に入るから犯人が誰だったか教えてね、多分あの別れた夫だと思うんだよね。」

と言いながら風呂場へ行きます。その後風呂からテレビのある部屋へ戻って、

「ね、あの人だったよね。」

と聞くと、

「そうやったかなぁ、それより〇〇は(俳優名)はカツラやね。」

ええと。そこには関心がなくてですね、いったい誰がなぜあの犯行を行ったのか、真犯人と動機を知りたいんですが。と母に言っても、それがきっかけで要らぬ小言を聞くはめになるのが嫌であきらめていました。自分のことだけに構っておればよかったわたしと違い、あれこれ考えることの多かった母にとってはぼんやり見ているその2時間の間が、「デフォルトモード」だったのでしょう。共犯者が誰、凶器が何などどうでも良く、仕事柄気になる美容関係の設定にはアンテナが立っていたようです。

「あの帯結びはおかしい….。」

とつぶやいていたこともあります。もちろん話の筋は追っていない。

一緒に仕事場に立っていた時も、鏡越しに険しい顔で私を呼びつけることがありました。お客様の面前であろうと後輩スタッフがいようと平気で叱り飛ばす人でしたから、あぁまた何かしでかしたかなと近づくと、

「はったい粉を買ってきなさい。」

と一言。しかもお客様に接している最中に、です。質問しても後回しにしても怒られますので、すぐ買い出しに行きました。母の父親は早くに亡くなり、苦しい暮らしだったとは聞かされていましたし、日本が大規模な戦争を行なっていた最中に少女時代を過ごしたため、食べるものへの執着があった人です。はったい粉とは麦焦がしとも言い、母はそれを湯で練って砂糖を加えて食べることが好きだったのです。

わたしには前後脈絡のないお使いに思えましたが、その時に彼女の頭に浮かんだのでしょう。香りや食べ物の記憶は長く記憶に残るのですね。家庭を持つまで30年近く実家で暮らしたのに、母との出来事には怖かった、怒られたの場面が圧倒し、楽しい思い出は少なく、とらえどころのない人でした。冗談やギャグをわたしがいうと怒るのです。

「また冗談を言って。」

と。本当でないことを聞かされて、腹が立ったのでしょう。ふざけることや、ズレた笑いが好きな私とは相性が悪い相手でした。

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