ナミゾウカンパニー 書籍部2課(海外)-1

みなさま本日のご機嫌はいかがでしょうか。

最近の半年間はアメリカが舞台の配信ドラマを観ていました。それまではもっぱら韓国ドラマが多く、Netflixからおすすめされる、新シリーズを次々に視聴しました。フィクションであるからこそ、世相や問題を抱えて身動きの取りづらい状況下にある人々、特に女性の身の上に共感しました。

ファンタジー要素を多めにしなければとても現実の辛さに向かえないように見えました。コンビニエンスストアで売っているアイスを値段も見ずに買いたい、と姉妹が言い合うシーンにもうなずけました。人情はもちろん世界中のどこの街にもあると信じています。しかしそれは一人ひとりの最低生活が満たされていて初めて他者をかえりみられるものです。アイスをいっぱい買ってみたいと言い合うドラマではまた、自由になるお金があったら何を一番に買いたいかと尋ねられた主人公が、

「冬のコート….冬に着るコートが欲しい。貧しさは夏にはわかりにくいけれど、冬になったら着るものがないとそれがよくわかるから。」

正確なセリフではありませんが、気に入った衣服を自由に買うことができない暮らしなのだとうかがわせます。この言葉に胸が詰まりました。私自身、家庭を持ってから真っ先に削っていき、今や買うことに意欲すら持たなくなった品目が衣服です。体のサイズにおいて特に制約がなかったのが幸いでしたが、いつも格安店舗で気に入らなくても買い、時々ショッピングセンターのバーゲン品を購入することが限界でした。冬に着るものは確かに単価が高くなり、ためらうことばかりでした。

ドラマを観ていた頃からいつか読んでみたかった韓国小説が文庫化されたことを知り、早速読んでいます。女性の息苦しさを淡々と文章にしている作品で、長編作ではないので読了は早かったのですがとにかく胸が痛くなります。

「82年生まれ、キム・ジヨン」

チョ・ナムジュ氏 著

です。韓国のドラマをたくさん観ている中で、年長者が絶対であること、男子の兵役があり、かつては一つの国家だったものが分断されていること、アメリカとの緊張関係、驚くほどの裕福さを持つ権力層の存在などを知りました。悲しさよりも怒りが湧いたシーンがあって、財閥の女当主(老女)が、名前だけは知っている程度の女性教師と廊下ですれ違う時、生意気だと言って青筋を立てて怒り出し、あろうことか彼女の額を小突くのです。他人です。人様の娘さんです。これは、「ある」話なんだなと思いました。それの連鎖が娘たちを隅に追いやり、苦しくしている。自分たちがそうされてきたのだから当たり前でしょ、は通らないとムカムカしました。

第一に気づいて欲しい。第二に我に返って欲しい。第三にこれは全体を見て正しいのか常に疑問を持ってほしい。自分が受けた差別や犠牲、いわれのないつっかかりは他者にしないでほしい。常に正しくあってきたかと問われればそうではなかった、愚かだった自身への自省もこめて強く思います。

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