ナミゾウカンパニー 書籍部1課

みなさま本日のご機嫌はいかがでしょうか。

先月の始めに信州方面へ小旅行に出かけました。

浅間温泉街にある旅館の「松本本箱」に一泊し、その名の通りたくさんの本にまさに囲まれる体験をしました。官製の建物とも販売目的の大型書店とも違う異空間体験でした。

既読の本もあり、懐かしく思ったりまた既知の著作者名を見つけて未読の作品を読み始めてみたり。

そもそも温泉ですから泉質も素晴らしく、その上食事も地元食材を薪火で焼き上げてもらえたりと、とても豊かに過ごしました。本の中に埋まったままでいたくなるほどでしたが、時間は有限。せっせとデザインやタイトルに目を走らせていた時に、

「坂口 恭平」

氏の文字を見つけて読んでみました。タイトルは、

「幸福人 フー」

です。坂口氏夫人の「フー」氏の様子を夫からの観察記録として書いておられます。坂口氏が20代の始めに知り合い、夫人とともに暮らすうちに少しずつ知ったこと、助けられてきたこと、その成果として製作者として生きることと、個人として波を乗り切りながら生きていることの実践ができるようになってきたことが書かれています。

老齢期に入り、いちいち涙してしまうことが増え、これにも泣かされるのかなと思いながら読んでいくと、坂口氏の正直な内情があらわになっていて、泣くでもなく笑うポイントがあるわけでもなく進んで行きました。

帰路の荷を増やさないために、帰京してからその本を購入し、じっくり読んでいきました。占術を学んできた敬愛する先輩によると、人にとっての幸せはできるだけいつでも「中庸であること」と聞いています。この坂口夫人はまさにその「中庸の人」に見えます。人生は一度きりだから、燃えて生きる、とか勝負してみたい、世界を変えたい、さまざまに生きる意味を明確に持つ人は多く居ますし、そのメッセージを発信し、容易に見聞きする時代になりました。

私には未だこの年齢になっても生きる意味や、人生で成し遂げたかったことを言葉で言える何かがありません。小心者であり、願いは「嫌なことが起きないこと」それだけなのです。

「幸福人 フー」

は不思議であり、大切な一冊になりました。とても好きな作家さんである「津村 記久子」氏の著作から私が受け取ってきた感覚と似て、大革命が起きるだけが変化ではないことを知りました。10代の頃、ゆえあって啓発セミナーに渋々参加させられたり、啓発指南書を読んできた後、いつももどかしい思いになっただけでしたが、この本にはこれまで動かなかった脳のどこかが動かされて、楽な方向へ行けるように感じています。

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