ナミゾウカンパニー 映像部2課

みなさま本日のご機嫌はいかがでしょうか。

同年代のマダムが多いであろう客層の年齢が高めのヘアサロンをいまだに見つけられず、ターミナル駅のある大きな商圏にある店舗で髪の手入れをお願いしています。毎回担当してくださるリサタナ氏とは多分親娘ほどのジェネレーション距離がありますが、とても良い会話のラリーができます。カレーを自作する趣味をお持ちですし、美食の宝庫である道産子さんですので、食べものの話もさらに面白いのです。

食に関しては別のカテゴリで書き記しますので、今日は薦められた映画、

「PERFECT DAYS」

について静かな驚きを感じたことを。

「ナミゾウさん、役所広司って好きですか。私ね、関心がなかったんですけど、PERFECT DAYS を観て、もぅ一気に好きになりました。」

とやや興奮気味に話すので、意外に思いました。確かにいつも若いアイドルや、いかにもお顔だけ、という著名人の話題はされませんし、ビジュアル重視ではないとは感じていましたが、彼のセクシーさを感じたそうなので、渋い好みだと。

昨年末に公開が始まっていますから、館も上映時間も日に日に減ってきていると思い、翌日早速鑑賞へ。

結論は、透明感と、あわいの素晴らしさを堪能できた作品です。「役所 広司」という人物のプロモーションフィルムですと言って差し支えないものです。そこへ感情の機微を乗せる。観終えて、リサタナ氏がグッとつかまれた彼のセクシーゾーンへは引き込まれませんでしたが、戸惑いや、後悔、照れや恥ずかしさ、それから実に無邪気に見せる嬉しさの表情は彼独自の芸術です。

言葉を発せず、間合いでそれらを表現し、鑑賞者に悟らせ、想像させる天才は他にもいます。「薬師丸 ひろ子」氏もそうです。落胆している感情を無言でかつ口角を必要以上に曲げずに受け手に伝えてきます。

いくつか私自身が引っかかったシーンがあります。主人公の平山氏が、ある親しい人物から低い声で一言投げかけられます。

「…….本当に掃除の…….仕事をしてるの?」

と。私自身がアルバイト先では掃除担当として採用され、もちろんトイレ掃除も含まれており、30分に1回の巡回と清掃がジョブです。そのシーンでは前段として、尋ねたその人は専属ドライバーが運転する自動車の後部席から現れ、乗り込む時もドライバーが後部ドアを開閉して去っていきました。セリフがごくわずか、しかしそれらから察するにピカピカの車上のその人物は他者の汚していく場所の掃除をしない日常にいるのでしょう。それらの作業を自分の生活とは切り離した特別なものととらえてるのだなと感じたことがひっかかりとなって残りました。

ヴィム ヴェンダース氏は日本映画にも造詣が深く、撮影にそれらの影響があると映画評で読んでいました。観ていて日本ネイティブではない製作者だなと必ずどこかに破綻が見えることが多いのですが、この作品は違いました。それは最近配信でも鑑賞可能になった、

「ジョン・ウィック コンセクエンス」

の冒頭部分を観たあたりでがっかりと興醒めしたのでなおさら思いました。この映画で日本地域が描写されますが、最高級ホテルのコンシェルジュ女性が京劇のようなメイクとヘアスタイル、和服姿で現れるジョン氏の旧友、ダメ押しがなぜか背後にバーンと光る四字熟語の電飾看板。パロディ作品であったり、笑ってもらいたいのならばまだしも、これはピリピリと命の奪い合いをするアサシンたちの映像のはずです。

「PERFECT DAYS」にはそれらの違和感がほとんど無く、ベビーカーを押しながら幼子の手を引いて歩いていく母の姿さえ「JAPAN」でした。

繰り返しになりますが、「役所 広司」氏からは色気を感じず、最も印象が強く残った演者は、「三浦 友和」氏でした。彼とは同世代であり、妻君はポピュラーシンガーであった人ですから、当時の露出がとても多く若き日の演技を覚えています。年齢を重ねても声質が変わっておらず、その色気は薄く、また端正なお顔立ちではあるものの良すぎて誰を演じても「三浦 友和」さん。の印象しかなかった彼。それが今作品では私にとっては驚きが残りました。

「知らないことだらけで終わっていくんだなぁ。」

とその独り言を映画でなければボソボソ言って、聞き取りづらいでしょうその一文を観ているこちらにははっきりわかる発声で、寂しさや後悔を乗せています。とても味のある役者さんになられたなと思いました。食わず嫌いは損、と実感しました。この人はかつてこんなだったからもういい、や他人の批評を鵜呑みにして避けるのは老い先短い人生でもったいないことです。

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