ナミゾウカンパニー 映像部1課

みなさま本日のご機嫌はいかがでしょうか。

かつてはTSUTAYAさんのサービスDISCASを利用して、映画を楽しんでいました。その後配信サービスの便利さを知るとそちらからは離れていきました。スクリーンでの映画作品を凌ぐ良いドラマが制作されてきています。

雑誌のシネマ紹介、テレビでの公開予告映像を見て、これはぜひ劇場で観たいと思える作品は一年中あります。足を運んだ映画館に置いてある公開予定のパンフレットが並べられた棚を見るのも楽しみです。今回鑑賞した作品は本編上映前に流れる予告映像に惹かれて観たものです。

「あまろっく」

ゆかりがなく関心のない地方都市ですとその名を聞いても地理はパッと浮かばないでしょう。甲子園球場のある西宮市とメガシティ大阪市の間に隣接する小さな市、尼崎市が舞台です。

主演の父娘を演じたのが、笑福亭鶴瓶師匠と江口のりこ氏。もうこのキャスティングを知っただけで、「行く!」と決めていました。鶴瓶師匠は私の地元西宮市在住の著名人。江口氏は十数年まえのテレビ朝日「時効警察」内で濃いんだか薄いんだかわからない不思議な魅力のある「サネイエ」役を演じていました。前後はさっぱり覚えていませんが、なぜだか小学生の算数の問題を警察官たちが解いていて、鉛筆が一本いくらで・・・という出題に対し、その値段設定が第一おかしいと文句を言っていたシーンに吹き出しました。確かに大人になって思うに、兄のよしお君と弟のかずお君が出かけます、兄のよしおくんは弟の5分後に家を出ます、兄の歩く速さは・・・と続き、

「なんで一緒に出ぇへんの。一緒に出たらえぇやん」

と問題につっかかりたくもなります。さて置き。さらにキャストには高校の後輩君である松尾諭氏も出ます。若き日の父を演じていて、当たり前のように滑らかな関西イントネーションです。

鶴瓶師匠は鶴瓶カラー、江口氏は江口カラー全開。彼と彼女のプライベートかに見えてくる日常が映されていきます。愛情はべたっとするものではなくぶつかるその時にも火花のように感じるのだなと思います。

今はもう宇宙へ還って行った両親が最初に所帯を持った町。地方公務員だった父が一番長く働いていた町。知り合いが寿司店を営んでおられ、そこへ何度も連れて行ってもらった町。鰻重を何度か食べさせてもらった三和商店街のある町。それが尼崎市です。疲れているわけでも嫌なことがあったわけでもないのに尼崎のあちらこちらが映るだけでじわじわ涙が出ました。こどもだった頃の体験は強烈に残っているものです。

きっとドローン撮影をしていると思われる尼崎港から大阪湾への河口がとても美しいと感じました。公害訴訟もあり、空気がキレイだったとは言えない昭和中期の尼崎市です。それでも人はその日その日をせっせと生きていました。父母もその中の二人で、特に父は勤務先で接する面白い人の話を時々聞かせてくれました。

地方都市とはいえ高度経済成長期の尼崎市も人や物の流れが早く、各所忙しかったようです。父の職場の門前商店街に喫茶店があったそうで、出前をしてくれるのですが、注文が集中するためかコーヒーカップの持ち手があるものとないものが混在して持ってきてくれるのだそうです。それでも中身が入っているんだから、

「まぁえぇやん」

と苦笑していたそうです。現代だと、そのかけている持ち手のところで怪我をするだの、サービスがなっていないだのやたらと苦情を言う人がいるかもしれません。

スクリーンで観てよかったなと思う作品でした。劇場公開で観ようと思う邦画作品は少ないのですが、これはとても良い作品でした。これからますますドローンでの豊かな映像が観られる時代になるといいなと願います。

鶴瓶師匠と再婚する役柄を演じた中条あやみ氏の愛らしさと、何より関西イントネーションを初めて聞き、メイク品のKATEキャラクターをされている彼女が喋るそれらが、本当に彼女のものなのか、吹き替えではないのかと疑いたくなるものでした。それくらい笑ったりはしゃいだり、江口氏と言い合ったり、聞いていて心地よいラリーでした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました